会誌

日本包括歯科臨床学会誌(vol.1. no.1)刊行

筒井昌秀先生と筒井照子先生が主宰する筒井塾の,顎口腔の炎症の要素,力の要素を包括的な観点で診断し,最小の侵襲で最大の治療効果をあげることを目的とした,包括歯科臨床のコンセプトを継承するJACDと咬合療法研究会が2012年に合併し,日本包括歯科臨床学会が設立されました. 振り返りますと包括歯科臨床の習熟を目的として1988年に筒井塾が発足し,受講後に両先生の臨床に対して共感した先生方が集い,1991年にJACDというスタディグループが結成されました. また,筒井照子先生が提唱された生理学的咬合論の臨床応用を学ぶ筒井塾咬合コースが1997年にスタートし,その後2003年に受講後のフォローアップを目的として咬合療法研究会が創立されました. 両先生のご指導をいただきながら,主にJACDでは炎症のコントロールを中心に,咬合療法研究会では力のコントロールを中心とした研鑽を重ねてきました.JACDは設立20周年,咬合療法研究会は10周年の節目を迎え,会員数もJACD250名,咬合療法研究会650名を超える規模に至りました. この間,2003年に『包括歯科臨床』(クインテッセンス出版),2004年に『イラストでみる筒井昌秀の臨床テクニック』(同),2010年に『態癖─力のコントロール』(同)が刊行され,そして2015年には包括歯科臨床における咬合療法の集大成ともいえる『包括歯科臨床II顎口腔機能の診断と回復』(同)が発刊され,大きな反響を得ています.またJACD,咬合療法研究会両会会員による様々な日本歯科医学会所属の学会発表や学会誌,雑誌などへの論文投稿,講演会活動を通して包括歯科臨床が周知されてきました. 2012年にJACDと咬合療法研究会の役員が協議し,二者を統合し研鑽することで,包括歯科臨床の科学的妥当性をより広く討議するために,日本包括歯科臨床学会を立ち上げることになりました. 同年に東京で「日本包括歯科臨床学会設立総会」が開催され,その後2013年第二回総会は神戸,2014年第三回総会は九州,2015年第四回総会は東京で開催され,いずれも活況を呈しました. そして,このたび学会の核となる「日本包括歯科臨床学会誌」が刊行されることになりました.査読委員長には元九州歯科大学教授の横田 誠先生にご就任いただくことになりました.これにより,会員の包括歯科臨床に対する理解がより深まり,そして包括歯科臨床に必要なエビデンスの構築が期待されます. 今後は,より信頼性の高い情報発信が可能となり耳鼻咽喉科・整形・呼吸器・循環器・脳神経外科などの隣接医学会での認知や医科・歯科大学に在籍する研究者の入会なども視野に入れ,包括歯科臨床の本質を科学する心をもって広く伝えていきたいと考えています.会員の皆様のより一層のご協力をお願いします.
平成27年12月 日本包括歯科臨床学会 会長 国賀就一郎



■Contents

「日本包括歯科臨床学会誌」発刊によせて 筒井照子(日本包括歯科臨床学会 顧問)
巻頭言 国賀就一郎(日本包括歯科臨床学会 会長)

【原著】 フェイスボウを用いた咬合器付着の検証
Different combinations of facebows and articulators resulting in different setups of casts on the articulators
長田耕一郎/筒井照子/増田長次郎/斎藤 肇/田代孝久

【症例報告】 睡眠時無呼吸症候群への歯科的対応
Dental treatment options for sleep apnea syndrome
筒井照子/内田美和子

【症例報告】 包括歯科臨床における個体差を考える
Comprehensive dentistry in the face of individual variabilities
国賀就一郎

【症例報告】 2症例の長期経過から考える長期安定に必要な機能運動の理解
Understanding of functional movement as a prerequisite for long term stability
木下俊克

【症例報告】 舌房の確保に配慮した力のコントロール
Management of functional and parafunctional movements with considerations for tongue space
西林 滋

【症例研究】 筒井昌秀の臨床を振り返る
Looking back on Masahide Tsutsui’s clinical practice
筒井祐介/帆足亮太郎

日本包括歯科臨床学会誌(vol.2. no.1)刊行

日本包括歯科臨床学会雑誌, 第2巻 第1号が発刊されることになりました. 編集委員長の小川晴也先生, 査読をしてくださった横田誠先生, 編集・査読委員の先生方, そして雑誌の形にしてくださった事務局の秋元秀俊氏に感謝いたします.
包括歯科臨床とは, 「炎症と力の要素について包括的な視点から診断し, 最小の侵襲で最大の治療効果をあげること」を意図する診療です. 私は大学を卒業してから数年, 福岡県久留米市の青木歯科医院に勤務させていただきました. 当時筒井歯科医院で開催されていた症例検討会に青木歯科医院も参加していたため, 幸運にも私も参加することができました. それが私と包括歯科臨床との出会いです. 当時, 歯科医師として新米であった私は昌秀先生と照子先生の手がけた症例の美しさに, ただただ感銘を受けました. しかし当時はなぜそのような美しい結果となるのかは分からず, 臨床において失敗も多く経験しました. その後, 形成印象コース, 歯周外科コース等を受講させていただき, 開業後もJACDの先生方に多くのことを教えていただきました. 現在では筒井照子先生のおっしゃる, 「機能は形態を現し, 形態は機能を現している」ということがだんだんわかってきました.
「プロとしてのプライドを持ち, 医療. 人として純粋にチャレンジし, 継続していくこと」といった信念もって臨床を行っています. 簡単には結果を得ることはできませんが, 苦しめば苦しむ程, みえてくるものがかならずあると思います. 明日の自分のために, 歯科医人生を満足して終えることができるように. そして何より患者さんのために, 自分自身にチャレンジしていく姿勢が 臨床家にとっては最も大事であると思います.
当学会誌を一人でも多くの方に利用していただき, 明日からの臨床の一助となれば幸いです.
(「日本包括歯科臨床学会誌」巻頭言 より抜粋)



■Contents

巻頭言 樋口 琢善(日本包括歯科臨床学会 会長)

【原著】 OSAS(閉塞性無呼吸症候群)を引き起こす要因と原因療法の探究
第1報 舌骨エリアの判定と舌筋力
Study on causal factor and causal treatment of OSAS (Obstructive Sleep Apnea Syndrome)
Part1: Evaluation of hyboid bone area and tongue muscle strength
飯田光穂

【原著】 OSAS(閉塞性無呼吸症候群)を引き起こす要因と原因療法の探究
第2報 原因療法としての舌筋トレーニング
Study on causal factor and causal treatment of OSAS (Obstructive Sleep Apnea Syndrome)
Part 2: Tongue muscle training as causal treatment
飯田光穂

【症例報告】 臼歯部咬合崩壊に対して咬合支持の回復を優先し,包括的に咬合再構成を行った症例
A case of comprehensive occlusal reconstruction for posterior bite collapse, prioritizing the recovery of occlusal support
樋口琢善

【症例報告】 臼歯部咬合崩壊に対して総合的な改善を目指した一症例
A case of the posterior bite collapse aiming for comprehensive improvement
中島稔博

【症例報告】 咬合再構成におけるリスクファクターを考える
Considerations of risk factors in full mouth reconstruction
藤田幸彦

日本包括歯科臨床学会誌(vol.3. no.1)刊行

日本包括歯科臨床学会誌第3巻第1号が発刊されるに当たりまして,編集委員長 小川晴也先生,査読委員長 横田誠先生,編集・査読委員の先生方,発刊にあたりご尽力いただきました秋編集事務所 秋元秀俊様に深く感謝申し上げます. さて,昨年9月には第7回日本包括歯科臨床学会学術大会・総会が東京・お茶の水の連合会館で開催され,多数の参加者を集めて成功裏に終えることができました.当学会も発足から7年目を迎え,歯科臨床の特徴的な捉え方が少しずつ浸透してきていることを感じることができました.それは,ボトムアップ・トリートメントと言われる一歯単位の基本に忠実な歯科臨床技術であり,トップダウン・トリートメントと言われる全身や顎口腔系全体を見据えた,患者を俯瞰的視点で捉える歯科臨床咬合論であります.1970年代~1990年代にかけてこのような包括歯科臨床を実現しようとしてきた,名誉顧問である故・筒井昌秀先生と顧問である筒井照子先生の歩みが確かなものとなっていると言えるのではないでしょうか. 筒井塾門下生が研鑽する場として活動してきたJACD及び筒井咬合理論を研鑽する場として活動してきた咬合療法研究会が互いに手を携えて当学会の骨格となっておりますが,これから包括歯科臨床を学びたい,確実な基本的歯科臨床技術を学びたい,咬合療法を学びたいという,次世代の先生方にわかりやすく門戸を広げる目的で,2018年スタディグループ筒井塾が発足しました.現在までのそれぞれのスタディグループの活動が変わるわけではありませんが,母体としての位置づけを明確にすることで一体感が生まれるとともに,両スタディグループの長所を結び付け,包括歯科臨床という視点を大切にすることができます.会員の先生方にはJACD,咬合療法研究会ともに積極的にご参加いただき,ご一緒に成長していくことができれば幸いです. 2018年は,めまぐるしい世界情勢の変化や天災などに多く見舞われました.会員の中にも大変な御苦労をされた方もいらっしゃると思います.さまざまな「災」もあったかもしれませんが,それらを乗り越えることで「福」を感じることができることもまた事実です.顎口腔系における包括歯科臨床とは,人間が生きるための根源的な機能回復であるとともに,その人が生きていくうえでの満足感をも回復させることができる考え方ではないでしょうか. まさに「福」を実現することのできる歯科臨床です. 結びになりますが,本学会誌が会員各位の包括歯科臨床に多大な貢献ができますことを祈念致しまして巻頭言といたします.
平成31年1月 日本包括歯科臨床学会 副会長 倉田 豊



■Contents

巻頭言 倉田 豊(日本包括歯科臨床学会 副会長)

【症例報告】 成人女性における反対咬合の治療とメインテナンスにおける考察
Consideration on treatment and maintenance of adult female patient with anterior crossbite
常深伸介

【症例報告】 矯正治療に伴う不定愁訴に対し,顎位の異常を疑い咬合再構成を行った一症例
A case of comprehensive occlusal reconstruction for indefinite complaint after orthodontic treatment
矢守俊介

【症例報告】 可撤式装置を用いて小児矯正に取り組んだ一症例
A case of orthodontic treatment for adolescent patient using a removable appliance
帆足亮太郎

日本包括歯科臨床学会誌(Vol.4/5, No.1)刊行

2020年より世界は新型コロナウイルス感染症という今まで経験したことのない甚大な災禍に見舞われております.度重なる変異株の出現もあり,以前のような生活に戻るにはまだまだ時間がかかりそうな状況です. 会員の皆様方におかれましても感染予防対策・診療制限・各種行事の自粛など本当に不自由な環境下でお過ごしのことと思います.本人または周囲の方々の感染などにより大変な経験をされた方には心よりお見舞い申し上げます. 当学会およびスタディーグループ筒井塾の活動におきましても,感染予防のため2020年は北海道での学術大会や各支部例会が中止となり,筒井塾も全てのコースが一時中止となるなど継続して学べる環境がほとんどなくなりました.しかしそのような状況の中,2021年は役員の方々のご尽力によりwebによる学術総会,咬合療法研究会合同支部例会,JACD例会を多くの参加者を集め開催することができました.コロナ禍で一気に普及したwebの有効利用により遠方の方々でも移動時間なく,気軽に勉強会に参加することが可能となりました.悲観的に考えてもコロナの感染状況は変えられませんので,個人的には広く包括歯科臨床を学べるwebという有効な方法が確立されたことはコロナの思わぬ恩恵とポジティブに捉えております. そして2022年は,日本包括歯科臨床学会10周年の節目の年となります.故・筒井昌秀先生を中心に結成され歯周治療や補綴治療を広く学ぶJACD,筒井照子先生の提唱する生理学的咬合論の臨床応用を学ぶ咬合療法研究会,それぞれの例会での発表を見ると最小の侵襲で最大の効果を挙げる包括歯科臨床の考えが広く学会会員へ浸透してきていることが実感されます. これからの歯科界では,軟食化に伴う骨格の発育不全から従来は発症しなかったような些細な生活習慣でも顎口腔機能障害を発症する患者さんが増加してゆくと予想されます.全身の健康に寄与できる包括歯科臨床が広く歯科界に浸透し,一人でも多くの顎口腔機能障害を抱える患者さんが救われることを切に願います. 2022年9月には,日本包括歯科臨床学会10周年,JACD30周年,咬合療法研究会20周年を記念した学術大会(大会長:上田秀朗,実行委員長:筒井祐介)が,筒井塾聖地の北九州にて開催されます.会員の皆様方との久しぶりの再会を楽しみにしております. 最後になりましたが,第4・5合併巻第1号の発刊にあたり編集委員長の小川晴也先生,編集・査読委員の先生方,そしてご尽力してくださった秋編集事務所の秋元秀俊氏に深く感謝申し上げます.本学会誌が会員皆様方の臨床の技術・知識の向上に貢献できることを祈念いたします.
令和3年12月 日本包括歯科臨床学会 副会長 藤田 亨



■Contents

巻頭言 藤田 亨(日本包括歯科臨床学会 副会長)

【総説】 包括歯科臨床における歯周治療の役割
Perodontal treatment in comprehensive dental care
中島稔博

【総説】 矯正治療を単なる美容で終わらせないために
―成長期の患者に対する包括歯科臨床の中での矯正治療―
The purpose of orthodontic treatment is not temporary cosmetic
― Orthodontic treatment as part of comprehensive dental clinical practice for growing patients
小川晴也

【総説】 包括歯科臨床における補綴治療の要点
Key points of prosthetic treatment in comprehensive dentistry
国賀就一郎

【総説】 咬合様式と側方ガイドスプリント
Occlusal contact pattern and lateral guide splints
筒井照子